作曲と選曲

選曲について
スターウォーズの場合

たとえば映画「スターウォーズ」、音楽も有名ですよね。この映画は選曲なのでしょうか・・・いえ、この映画は「作曲」です。場面に応じた音楽を作曲しているからです。この「場面に応じた」という部分が重要で、物語の展開に合わせて作曲段階で作り込んでいくのです。音楽の録音スタジオで映像を流しながら指揮者がタクトを振り、オーケストラが演奏することもあります。そもそも昔はこのスタイルだったのです。

ドラゴンボールの場合

ではTVアニメの「ドラゴンボール」はどうでしょう。劇中音楽の作曲は菊池俊輔さん(先ごろお亡くなりになりました・・・ご冥福をお祈りします・・・涙)ですから、やはり作曲でしょうか。

いいえ、この作品は「選曲」です。

おいおい、作曲してるじゃないか!とファンから怒られそうですが、たしかに菊池俊輔さんが作曲しているのですが、さっきのスターウォーズのような「場面に応じた」音楽ではなく「場面を想定した」音楽なのです。

どう違うのか

具体的に言いますと、この「ドラゴンボール」の場合、作曲家に楽曲を発注するのは選曲家なのです。例えば「戦いの曲」「平和な曲」「悲しい曲」などとリストを出し、それに応じて作曲家が「作曲」するのです。つまり「ドラゴンボール」という作品の為のライブラリー音楽を「作曲」するわけです。ですから楽曲の数は短いものから長いものまで全部で100曲を超えることもあります。その中から毎回「場面に応じた」選曲をして編集して映像に合わせていくのです。ですから作曲家にとって想定外な使用も行われます。作曲家が「悲しい曲」のつもりで作曲しても「戦いの曲」として使われることもあります。なぜなら、それが「選曲」だからです。

初期の宮崎駿さんの作品に「ルパン三世 カリオストロの城」があります。作曲は大野雄二さん、名曲ですよね。でも、この作品も選曲家・鈴木清司さんが居なければ、あの完成度には到達していません。サントラ盤CDと映画を聴き比べてみてください。音楽編集ハンパ無いです。

「作曲」に必要なのが音楽を作る才能なら、「選曲」に必要なのは、音楽を演出する才能ですね。

音響効果でも、この「選曲」という分野が独立しているのは、あくまで音楽を扱うという抽象的な世界だからだと思います。自分で音楽を作るわけじゃないけど、作品における音楽表現を任されるわけだから、やはり重要な仕事なんですね。

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