DAT

機材のお話

DATという機材を知っている人はまだ大勢居るでしょう。スタジオにも残っていますしね。このDAT、いったい何かといえばカセットテープレコーディングメディアです。それまでのテープレコーダーがアナログだったのに対し、初めての一般向きデジタルテープレコーダーとして登場したのがDATです。DATはデジタルオーディオテープ(Digital Audio Tape)の略で、ダットとかディーエーティーとか呼ばれてました(わたしはディーエーティー派でした)。カセットテープの半分くらいの大きさで、作りはビデオテープに近く、片面録音・再生のみです。

今から30数年前に登場しました。私は発売されて早々にSONYのDATレコーダーを購入しました。たしか20万円くらいでした。アナログ時代に先陣をきって登場したデジタル機材でワクワクしたものです。48khz16bitで、CDよりやや音質が良い規格でした。(CDとの互換で44.1khz16bitにも対応)何が良いって、やはり音質の良さ!それまでのアナログレコーダーにはどうしても音質劣化を感じていましたが、感覚的にはまったく劣化を感じず、デジタルコピーなら何回コピーを繰り返しても音質劣化がありませんでした(あくまで感覚的ですよ)。おまけにメディアは小さく置き場にこまることが無いのも利点でした。録音時間も最高120分あったし、これからはDATの時代だと思いました。

ただ周りはまだまだアナログ機材。結線もアナログだし作業もアナログ、DATの内部のみデジタルだから環境的にはほとんど変わりません。せいぜいCDとの結線がデジタルで行えましたが、CDの方が再生作業の早さ、選曲のしやすさなどスタジオ作業には向いていたので、わざわざDATにデジタル録音する意味がありませんでした。スタジオには業務用の、スタートポイントを調整したり自動再生できるようなデッキもありましたが、高いうえに設定がやや複雑、面倒くさいからロクミリにコピーして作業するという、デジタルの恩恵ゼロ状態でした。おまけにビデオテープのような複雑なメカニズムもあってか、デッキとテープのメーカーが違うと読み込めない、読み込んでも内部に絡みついてテープが損傷するなどの相性問題も存在しました。ですからDATの役割は、ほぼバックアップに限定されていきました。スタジオではナレーション録音時にバックアップとして同時録音し、問題があればDATから取り出すといった使い方です。あくまで記録メディアであり、作業には向かないということです。

そんなこんなで、残念ながらこの画期的なデジタルメディアは世の中から消える事になりました。活躍した期間は20数年くらいでしょうか・・・最初から最後まで知ってる私には少し寂しい気がします。今では記録済のDATテープ数百本が残り、必要な内容をデーター化しています。リアルタイムでしか作業できないので膨大な時間がかかります。おまけにデッキも販売されていないので過去の機材を修理しながらになります。とはいえ、それだけ多くDATと長く付き合ってきたわけですから感慨深さがあります。本当にお疲れさまでしたと言いたいですね。

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