2019年公開・監督:トッド・フィリップス 主演:ホアキン・フェニックス 音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
アカデミー賞候補作品
この映画は2020年度アカデミー賞の作品候補になりました。いつの間にかアカデミー作品賞のノミネート作品が増えていると思って調べたら、2009年からでした。それまでノミネート作品は5本だったんですけどね。この2020年度には9本ノミネートされましたが、ジョーカーは受賞しませんでした。作品賞は取らなかったのですが・・・。
バットマンのジョーカー
ジョーカーはバットマンに出てくる悪役です。この悪役を主人公にして映画にした作品で、ホアキン・フェニックスが鬼気迫る演技をして、アカデミー主演男優賞を受賞しました。
このジョーカー、映画自体も、演技も、スタイルも、完全に「ダークナイト」のジョーカーに影響を受けまくってると私は感じました(たぶん否定されると思うけど)。例えばジョーカーがバスに乗っているシーン、パトカーに乗っているシーンなど、「ダークナイト」の車から顔を出して気持ちよさそうにしているシーンと印象がかぶりますし、髪型も似せてるし(乱れ具合とか)繕った狂気具合も似ている。
ちなみに「ダークナイト」のジョーカー役、ヒース・レジャーはアカデミー助演男優賞を受賞しています。「ダークナイト」が遺作になるという、実に残念な運命でしたが・・・。
ヒース・レジャーのジョーカーが居なければ、この映画は無かったでしょう。それほどヒース・レジャーのジョーカーは素晴らしく、申し訳ないが、私は「ジョーカー」のジョーカーより「ダークナイト」のジョーカーの方が100倍良いと思っています。
まるで別次元のゴッサム・シティ
このジョーカーも舞台はゴッサム・シティーで、ブルース・ウェインも出てきますがバットマンは出てきません。ジョーカーが如何に狂気と化していくかと描いた映画ですが、今まで語られてきたジョーカーとはまるで別物です。貧困と病気と妄想が狂気を作り上げた事になってますが、そんな過去だったっけ?しかも意外に人間臭く、悪いけど狂気まで行ってない、悲劇のヒーローになってます。
映画云々ではなく、設定がちょっとおかしくないですかねぇ・・・ひょっとしてペンギンもナゾラーも、こんな生い立ちなんでしょうか。
ただアカデミー賞はこういった映画が好きですね。苦悩や差別、貧困、虐げられた者たちは藻掻きながら生きている!みたいな話。悪くはないけど、ジョーカーをここまで作り変えて悲劇のヒーローにして、私はちょっと受け入れにくかったなぁ・・・そっか、ヒース・レジャーのジョーカーの大ファンだから、私はちょっとひねくれてるのか(笑)。
サウンドトラック
あくまで個人の感想ですが・・・
音楽:ヒドゥル・グドナドティル
2020年度アカデミー作曲賞を受賞しました。女性作曲家の受賞は4人目だそうです。映画音楽(テレビ以外)はこの「ジョーカー」が初めてみたいです。
ダークナイトの影響
先程ジョーカーの件でも、やたら「ダークナイト」の影響を受けていると書きましたが、音楽も絶対受けてます。ただしメロディーや劇伴ではありません。ジョーカーの音です。
「ダークナイト」では監督のこだわりで、ジョーカーのテーマ?音?を付けたいとのことで、作曲家のハンス・ジマーはエレクトリック・ヴァイオリンで作った様な不協なロングトーンを作りました。「ダークナイト」では映画の冒頭からこの音(音楽では無いと思う。サントラ盤には入っているけど)が流れるのですが、ジョーカーの狂気を表現する上で、良い効果を上げていました。
ヒドゥル・グドナドティルも、全然ピッチも音も違いますが、演奏には向かない技法で、弦のロングトーンを多用しています。これって「ダークナイト」の印象を利用してませんか?たしかに低音中心で、違うといえば違うけど、最初からジョーカー的って思ったのは、「ダークナイト」を知ってるからです。
ヒドゥル・グドナドティルってチェリストらしいので、弦の扱いには慣れているんでしょう、普通の弦の演奏ではないスタイルの音楽でした。ブラスも低音が主張する音楽がありましたが、基本的に狂気を表現する音楽を書いたのだと思います。作品が人間臭いだけに、ヒドゥル・グドナドティルの音楽は合ってました。そういう面では良かったんじゃないかと思います。
総括
まったく別世界のジョーカーを描いたので、他のバットマンのジョーカーと比べるのは間違っているのかもしれませんが、そのわりには「ダークナイト」のジョーカーを意識し過ぎている映画な気がしました。おそらく会社側は「もっとダークナイトに寄せろ」と言い制作側は「独自の世界観とパフォーマンス」を目指したのでしょうね。
私的には、あらためてヒース・レジャーのジョーカーの素晴らしさを再確認した映画でした。
辛口レビューでごめんなさい・・・。
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