著作権

選曲について

選曲の仕事を行なう上で、常に隣りにあるのが権利の問題。一番大きいのが著作権です。

音楽は著作物

あたりまえの話ですが、音楽は著作物です。誰かが作曲したのです。なので当然権利が発生します。ごくごく簡単に説明しましょう。

著作権

音楽を作曲、編曲、作詞した人に与えられる権利です。個人かもしれませんしグループかもしれません。仕事や人種、年齢に関係なく、誰にでも与えられる権利です。バスの運転手であろうが、中学生であろうが、音楽を作った人ならば、その人に著作権があります。

著作隣接権・原盤権

その音楽を作るにあたって制作費を払った人や会社に与えられる権利です。CDを作って販売する会社が制作費を出したなら、その会社に原盤権があります。

著作隣接権・演奏家権

その音楽を演奏した人に与えられる権利です。

他にも数々と、いろいろな権利がありますが、この3つは把握しておきましょう。

選曲作業には必ず権利関係が存在する

既成楽曲を選曲する仕事には、必ず権利関係が発生します。例えば映像作品に某アーティストの市販楽曲を使用すれば、著作権と著作隣接権は必ず発生します。では選曲家は毎回、著作権料と著作隣接権料を支払っているのでしょうか・・・。

いいえそんな事はありません。が、誰かがお金を払います。また我々も違う名目で料金を払います。

テレビ番組

テレビ番組を見ていると、知ってるアーティストの曲や、自分が持っているCDの曲が、普通に流れてますよね。つまりテレビ番組では、一般に販売されている楽曲が選曲されているわけです。問題ないのでしょうか。

テレビ局はJASRACなどの著作権団体などと包括契約を結んでいて、一括して料金を支払っているのです。ですから選曲時に一般販売楽曲を使用しても、キューシートという使用報告書に、使用番組、使用楽曲、使用時間などを記載して提出すれば、選曲者が、いちいち許諾をとることも、料金を払うこともありません。

なのでテレビ番組は選曲できる楽曲の幅が広いと言えます。

ただ例外もあります。著作権団体に所属していない作曲家の楽曲や、海外でしか取り扱ってない楽曲などは使用可能楽曲の対象外です。なので、通常通り個別に交渉し許諾をとらなければなりません。もちろん料金も発生します。

また、テレビ局以外では、大手ラジオ局も包括契約を結んでいます。

Youtubeやニコニコ動画

著作権団体と包括契約を結んでいますので、音楽使用において著作権を支払う必要がありませんが、すべての著作権団体との包括契約ではありませんし、著作隣接権は発生します。

つまり有名アーティストの楽曲を使用したいと思っても、一般販売楽曲を使うことはできません。自分で演奏し直す必要があります。なので、事実上一般販売楽曲での選曲はできません。

とはいえ、いーっぱい市販楽曲がアップされていますよね。それはレコード会社の公式チャンネルがアップしているか、もしくは違法アップロードです。

映画や販売ビデオ、それ以外の作品

基本的に個別交渉です。使用する楽曲の著作権、著作隣接権を一つ一つクリアして料金を払わなければなりません。

権利関係が発生しない楽曲

権利関係が発生しない楽曲はありません。著作権フリー楽曲であろうが、ネットでタダでダウンロードできる楽曲においても権利関係が発生します。

著作権フリー楽曲

先程も書いたように、著作権は権利の一つであり、著作権フリーは「著作権料は発生しません」という意味で、著作隣接権は存在します。また著作権フリーの音楽を購入しても、購入者が作曲者になるわけではありません(あたりまえですね)。一定の契約条件の中で、使用料以外の料金は発生しませんという意味です。

非常に勘違いが多いのですが、仕事の発注で「著作権フリーの曲で選曲して」などと言われ、作業して完成したら、すべての楽曲権利を買い取ったと勘違いするプロダクションやクライアントの方がいらっしゃいます。

著作権フリー楽曲で仕上げた作品は、その作品のみ、使用に際して著作権料が発生しないという意味で、その作品を改変して数年後に新たな作品となる場合、そこに使用された音楽には料金が発生します。なぜなら「使い回し」となり再契約楽曲となるからです。また当初著作権フリー楽曲として存在していた楽曲が、数年後には著作権の存在する楽曲になる場合もあるのです。それどころか権利が消滅し、お金を払っても使用できない楽曲になる場合もあります(作曲者の意向など)。

著作権フリー楽曲は著作権の放棄された楽曲ではありません。

音楽ライブラリーを使用する選曲家は、ライブラリーの使用料を払いますし、契約期間も存在します。そしてライブラリー使用規約に基づいて使用するわけです。つまり著作権フリー楽曲と言えども権利は存在するのです。

ご注意願いたいのがネットの著作権フリー楽曲の無料ダウンロード。作曲者の意思で無料でダウンロードして使用を認められているのでしょうが、契約書を交わした訳ではありません。たとえば映画で使用して、映画が大ヒットして有名になったとしましょう。その作曲者から連絡があり、「映画を販売する場合は著作権フリーの条件じゃないから料金を払え、10億円」などと言われれば裁判です。たぶんタダでは済みません。

”タダより高いものはない”状態にならないためにも、権利は常に意識しておきましょう。

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