選曲家と効果音

選曲について

アニメやドラマなどは選曲の他に効果音担も参加しますが、企業ものVPや、ドキュメンタリ番組など、選曲と効果音を一人で担当する場合もあります。(予算が無い場合が多いのですが・笑)なので選曲家もある程度の効果音を所有しています。

効果音ライブラリー

効果音にはミュージック・エフェクト(ME)とサウンド・エフェクト(SE)があり、MEは短いアクセント音楽、例えば♫ポロロロローン、とか、♫ジャジャーン、とかです。SEは”自動車が走る音”とか、”拍手の音”などの現実音です。

MEは音楽素材ですから選曲家にとっては専門です。単音のタッチ音などは、自分でキーボードを弾いて作ることもあります。現実音も身近な音は自分で録音することもできますが、効果音ライブラリーが無いと無理な音もあります。

爆発や銃器の音

この音はライブラリーに頼るしか方法がありません。特に銃器は日本では法律違反ですから、ほとんど海外のライブラリーから使用します。

海外の音

実際に海外に行けば録音できるのでしょうが、基本不可能です。例えばロンドンのビッグ・ベンや、海外の電話の発信音、メキシコやポルトガルの雑踏など、日本国内では録音できない効果音もライブラリー頼みになります。

動物の鳴き声

犬、猫などは、なんとか録音するのも可能ですが、ライオン、ぞう、狼などの動物、地域性のある鳥類などはライブラリーです。動物園での録音はお客さんの声が入りますし、鳴いてくれるかどうかもわかりません。鳥類は現地へ行っての録音になりますし、天候や時間の影響も受けますし、そもそもどの鳴き声が目的の鳥かわかりません・・・。

意外に難しい効果音録音

過去に実際に録音に行って苦労した効果音について書いてみましょう。

海の音なんて、簡単に録れそうな気がしませんか?いえいえめっちゃ難しいです。海の近くって道路があったり漁港があったり、意外に余計な音があります。ですから録音中に車の音が入ったり、船の音が入ったりします。

海の音ってどんなイメージですか?ザ〜〜〜、ザ〜〜〜、とか、ザバーーン、ザバーーン、とかのイメージがあると思いますが、実際にはそんな音はしません。もっと複雑に絡み合った音です。近くに行きすぎるとチャパチャパとした細かい音が多くなるし、遠いとゴーーーという「鳴り」が多くなります。岩場や崖でも音は違うし、イメージ通りの楽園的な海の音はまず録音できません。

高原

高原の音って、気持ちの良い距離感で、気持ちの良い鳥の鳴き声が聞こえるイメージですよね。実際はどうでしょう。録音された音は確かに自然のエコーがかかり美しいのですが、実は鳥が多すぎて煩雑です。もちろん場所にもよりますが、人工の音を避けけて奥に入れば入るほど鳥が多くなります。季節にもよるのでしょうね。

その季節ですが、最も困るのがホトトギスの声が入ること。ホーホケキョ〜って聞くと春のイメージがが強くないですか?実際は春じゃなくてもホトトギスは鳴きます。ですからできればホトトギスには鳴いてほしくない(笑)私の場合は編集してホトトギスの声をカットしました。

静かな住宅街

撮影時に余計な音が入ったから、差し替えで住宅街ノイズを用意して、と要求される場合があります。住宅街のノイズってどんな感じでしょう。遠くでたまに車が走ったり(おとなしめで)わずかに子供の声が入ったり、たまに雀が鳴いたりといったイメージでしょうか。そんな場所ほぼありません(笑)録音するとわかりますが、静かすぎるのです。なのでたまに入る自動車やバイクの音が大きすぎたり、声は話の内容が解ったり、エアコンの室外機の音が大きかったりします。この音も結局編集したり、組み合わせたりしました。

ほとんどライブラリーを使いますが、雷が鳴ると録音することがあります。雷は音が大きいので、環境を選ばず録音しやすいのです。が、雷に付き物なのが雨。純粋に雷の音だけ録音するのは意外に大変です。雨の降る前の雷を狙うしか無く、時間との戦いですね。

その雨ですが、これも難しい・・・。雨の音は結局、雨粒が地面に当たる音の集合体なのです。なので近くに人工物があると(例えば鉄製の物置とか、ポリバケツとか)その音がします。また録音は雨を避けて行なうので、近くの雨だれの音を拾ってしまいます。特に弱い雨は難しいです。なかなかイメージした、サーーーーという音は録音できません。

風自体に音はありません。風によって揺れたり、擦れたり、笛のように「鳴る」音を録音することになります。建物の近くだとヒューーーという音、草原だとサーーーという音、林だとバサバサした音ですね。風の録音で一番苦労するのが「風」です。マイクを吹いてしまうからです。どんなに風防を付けても限界があります。マイクの天敵ですからね。

擬音

擬音は、本物とは違う音です。擬音を使うことはかなり多いです。

光の音

そもそも、そんな音は存在しませんから、イメージに合わせて選ぶか作るかです。ピカーンとかシャキーンとか、イメージははっきりしてますよね。私も随分作りました。でも昔のアニメで使われていたようなカッコいい音はなかなか難しいです。

殴る音

実際に顔面を殴って音を録音することはありませんし、イメージ通りにはなりません。ですから殴り合いの効果音はほぼ擬音です。

これは昔の話しですが、小豆を広めのザルに入れて傾けることでザーーー、ザーーーと海を表現していました。この擬音海の良いところは、イメージ通りの波のストロークを作れることですね。私も昔、布団のシーツをたわしで擦って波の音を作った事がありますが、驚くほどリアルでした。ただデジタル時代で音が良くなった今では使えません。擬音は擬音で面白かったですけどね。

という訳で選曲家にも効果音は必要です。録音は大変だけど面白い。時間があれば、また録音に行きたいですね。

コメント