打ち合わせ

選曲について
昔居た、新人の話

もう20年以上前、そろそろ独り立ちさせようと思った部下が居ました。今回の作品は一人でやるようにと伝え、しっかり打ち合わせしてこいよと送り出しました。しばらくして事務所に戻ってきて、私に相談があるという。

部下「今回の作品で、MC〇〇の、12インチ:ミックスが必要らしく、揃えたいんですが」

私「は?何が必要?」

部下「とにかく12インチのレコードでミックスした曲が要るんです」

私「クラブ風とかDJとか、そういう音楽ってこと?」

部下「12インチ・ミックスです。自分で何枚か持ってますから、今から家に取りに帰ります」

私「ちょっと待て、ちゃんと説明してくれ」

今回の制作会社もプロデューサーもディレクターも、どんな作品かも大体解ってたが、そんなややこしい音楽を発注するはずがないと思って、どんな打ち合わせだったかを聞いたら状況がわかった。

つまり部下が、打ち合わせで勝手にイメージを膨らまし、自分の趣味の音楽を提案し、よく解ってないディレクターが「じゃあ、その音楽で」と言ってしまったという訳でした。思い込みと誘導ですね。

打ち合わせは重要

今回の例のように、お互い始めての相手との仕事の場合、相手をみて探る事もありますよね。どちらかの押しが強いと、流されてしまって、思っていない結果になってしまいます。ですから打ち合わせでは守るべき事があります。

失敗しない打ち合わせ

概要を聞く

雰囲気を把握する

名刺交換が終わって、打ち合わせが始まったら、まずは概要から聞きましょう。「今回はどんな作品ですか?」などと聞くのが自然ですね。そうしてざっくりとした雰囲気を把握します。

メディア展開を把握する

「この作品はオンエアですか?」「webでも使用しますか?」などと、早い段階で使用用途を聞いておくと、使える音楽、使えない音楽をジャッジしやすくなります。

何作目かを把握する

今回が初めての作品なのか、過去にも制作しているのかを確認しておくと、打ち合わせで迷った時に「前作ではどうでした?」と参考意見が聞けますし、世界観も統一するかどうか、早めに把握できます。

音楽を付ける場所を聞く

映像を見ながらの場合

映像を見ながら、音楽の入る場所を検討する場合、まずはディレクターがどうしたいかを聞きます。「山のカットからオープニング音楽が入って、メインタイトルいっぱい」「カメラがパンして決まったら音楽スタートして、祭りSEの中でフェードアウト」など、支持があればその通りを台本に書き込みます。ちゃんと書くのを忘れないこと。頭の中だけだと、打ち合わせのときは解ってるつもりでも、後で忘れます(笑)。

大概ディレクターは映像見ている時に関係ない話しをしますが(このカットめっちゃ大変でさぁ・・・とか)盛り上がり過ぎて脱線しないようにしましょう。後で困るのは自分です。

台本だけの場合

なんらかの事情で、台本だけで音楽の場所の打ち合わせをする事があります。その場合は台本に音楽箇所の線を引いていきますが、注意するのは尺(長さ)です。「ここの長さ、どれくらいですかねぇ」などと確認しましょう。思いもよらぬ長さの場合もあります。ナレーションやセリフが少ないから短いシーンとは限りません。

イメージを聞く

音楽箇所の打ち合わせ中に、イメージを伝えられる事もありますが、総括したイメージは聞いておきましょう。

プランを把握する

どんな音楽イメージでまとめたいのか、どんな世界観を作りたいのか、どんな風に展開させたいのか、ディレクターのプランを把握しましょう。

おまかせの場合

よく「音楽はおまかせします」と言われることがありますが「わかりました」と言ってすぐ帰るのはやめましょう。何か、大まかでも良いので、キーとなるイメージを探りましょう。どんな世界観が好きか、どんな音楽が好きか、手がかりがある方が音楽の提案がしやすいからです。

無理な音楽の場合

絶対使えない市販の曲をリクエストされた場合は、使えないので似た曲でも良いか、どの部分が似ていたいか(ジャンルなのか、楽器構成なのか、など)聞いておきましょう。もし確固たるイメージの音楽があるなら聞かせてもらって、把握しましょう。知ってる曲でも、全然違うバージョンの場合もあります。

オプション

相談にのる

自分の作品でも迷ってるディレクターも居ます。「どう思う?」とか「音楽多すぎる?」とか、相談にはしっかり自分の意見で答えましょう。わからないときは「何タイプか用意しますから、現場で試しましょう」とか解決策を提示します。また、提案がある場合もこの段階で言うと、打ち合わせのリズムを崩さないで済みます。言いたいことは小出しにしないで、まとめましょう。

以上、選曲の「失敗しない打ち合わせ」を考えてみました。このようにしていれば、最初の「昔居た、新人」の失敗は防げたでしょう。まずは相手に話させる。思い込みや、一方的な提案は禁物です。結局現場で違うと言われ、苦労することになりますからね。

打ち合わせは大切ですよ。

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