ジャスティス・リーグ

勝手にレビュー

2017年公開・監督:ジョス・ウェドン(ノン・クレジット) 主演:ベン・アフレック他 音楽:ダニー・エルフマン

2021年配信・監督:ザック・スナイダー 主演:ベン・アフレック他 音楽:トム・ホーケンバーグ

2つのバージョン

ジャスティス・リーグ

「ジャスティス・リーグ」はスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、アクアマン、フラッシュ、サイボーグといったスーパーヒーローがタッグを組んで敵と戦うアクション映画です。似たような作品に「アベンジャーズ」がありますが、「アベンジャーズ」はMARVEL「ジャスティス・リーグ」はDCコミックです。

私は、実はヒーロー集合映画はそんなに好きじゃなく、「スーパーマン」とか「バットマン」とか個別の映画が好きです。だって世界観が全然違うじゃないですか。「バットマンvsスーパーマン」の予告編を見た時、息子と「おいおい、バットマンって人間だろ?スーパーマンは地球逆回転させて時間戻せるんだぞ、勝負にならないじゃん!」と呆れてたくらいですから・・・。

話を戻しますが「ジャスティス・リーグ」は、2013年「マン・オブ・スティール」2016年「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」から続く一貫した世界観の物語です。ですから3本続けて見ると理解しやすくなります。

監督:ザック・スナイダー

「マン・オブ・スティール」、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、「ジャスティス・リーグ」の監督はすべてザック・スナイダー。何もなければ普通に3部作として終わっていたのですが、2017年にザック・スナイダーの愛娘が亡くなってしまいます。意気消沈したザック・スナイダーは「ジャスティス・リーグ」の監督を降板、後を引き継いだのが「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」のジョス・ウェドンでした。ジョス・ウェドンはワーナー・ブラザース(映画会社)の意向に沿って、脚本を書き足し、追加撮影を行い、明るいトーンの映画にして、ぴったり120分の作品に仕上げました。

スナイダーカット

ところが後になって、ザック・スナイダーのバージョンが見たいとファンが言い出し、署名も集め、ついに「スナイダーカット」が制作されることになりました。そもそもザック・スナイダーが監督していたわけだし、撮影もほとんど終わらせていたので、追加の撮影もしたようですが、「スナイダーカット」の制作は可能だったようです。

というわけで「ジャスティス・リーグ」「ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット」と2本の映画「ジャスティス・リーグ」が出来たのです。

過去にもあった2つのバージョン

このように別の監督が手掛ける同じ映画は、過去にも存在します。1980年の「スーパーマンII」は当初、監督は1作目と同じリチャード・ドナーの予定で撮影も進んでましたが(というか、最初から2本撮りしてました)途中で解任されて、監督はリチャード・レスターになりましたが、2006年にリチャード・ドナー版が発売されたので「スーパーマンII」は2バージョン存在します。

邦画では「RAMPO」という1994年の映画があります。監督:黛りんたろうバージョンと監督(本当はプロデューサー):奥山和由バージョンです。なぜ2つ作ったかは、諸説ありますがよくわかりません。

2つの「ジャスティス・リーグ」の違い

それぞれの映画、どこが違うのでしょうか。基本的に話しは同じですが、まず決定的に違うのが上映時間。ウェドン版は120分、スナイダー版は242分、なんと倍以上の長さです。これは後日配信のみの公開だったからでしょう。もし劇場公開なら、いくらザック・スナイダーでも、この長い上映時間は無理だと思います。

全体のトーンはウェドン版はユーモア、スナイダー版はダークです。

それを象徴する大きな違い、それはスーパーマンのコスチューム。ウェドン版は赤いマントに青いスーツ(みんなが知ってるやつです)、スナイダー版はオールブラックです。これ見た目に全然違いますからね。

そしてそして、もう一つ大事な違いがあります。私がこの映画を見た最大の理由はこれです。

サウンドトラック

音楽が違う

なんとなんと、音楽総入れ替えです。全く違います。これは珍しい。

ダニー・エルフマン

ウェドン版の音楽はダニー・エルフマン。映画音楽界では有名ですよ。DCコミックで言えば1989年版「バットマン」。監督:ティム・バートン、主演:マイケル・キートン、音楽はダニー・エルフマンです。ジョス・ウェドンとは「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」で仕事をしてます。

ダニー・エルフマンの「ジャスティス・リーグ」

ダニー・エルフマンの「ジャスティス・リーグ」はジョン・ウィリアムズやアラン・シルベストリといった正統派オーケストレーションによる音楽です。合唱も入ってましたが、コンサートピースとして演奏会にも出せそうな作りです。内容も1978年版ジョン・ウィリアムズ作曲の「スーパーマン」や自ら作曲した1989年版「バットマン」のフレーズも取り入れて、幅広い「ジャスティス・リーグ」の世界観を作っていました。フラッシュが活躍するスローモーションのシーンもダニー・エルフマンらしい怪しいファンタジーな曲でした。

トム・ホーケンバーグ

一方スナイダー版の音楽はトム・ホーケンバーグ。この人はダニー・エルフマンより後に出てきた人ですが、「ターミネーター:ニュー・フェイト」や、まもなく公開の「ゴジラvsコング」などの音楽を担当しています。

実は「ジャスティス・リーグ」の音楽は、そもそもトム・ホーケンバーグだったのです。ワーナー・ブラザースのDCコミックシリーズは「バットマン・ビギンズ」「ダークナイト」「ダークナイト・ライジング」とハンス・ジマーが音楽を担当してました。(「バットマン・ビギンズ」はジェームズ・ニュートン・ハワードも)そのつながりで「マン・オブ・スティール」、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」もハンス・ジマーが担当したのですが、もうヒーロー物に疲れてしまったジマーは「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」ではトム・ホーケンバーグと2人で音楽担当し、「もうヒーロー物はやらない」宣言してしまったのです。なので今回はトム・ホーケンバーグという、ある意味自然な流れだったのですが、監督交代と同時に音楽も交代になりました。もうほとんどの音楽は出来ていたというのに・・・。

トム・ホーケンバーグの「ジャスティス・リーグ」

トム・ホーケンバーグの「ジャスティス・リーグ」は、ハンス・ジマーと組んだ「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」の流れから来るパンチのある今風オーケストレーションです。ダニー・エルフマンとは違い「スーパーマン」の音楽もハンス・ジマーの「マン・オブ・スティール」のフレーズを使い、ダニー・エルフマンの「バットマン」の音楽も出てきません。完全にザック・スナイダーの3作品の世界観です。オーケストラの演奏もコンサートピースなものではなく、レコーディングで作り込むスタイルのものです。

感想

私はダニー・エルフマン派ですが、「ジャスティス・リーグ」に関して言えばトム・ホーケンバーグの方が良かったです。さっきも言った世界観の統一性・・・やはり1978年版「スーパーマン」1989年版「バットマン」のフレーズは邪魔です。トム・ホーケンバーグの方が作品を理解していたと思います。オーケストレーションもトム・ホーケンバーグのスタイルが合ってます。ダニー・エルフマンの音楽は、申し訳ないが古さを感じたし、ダイナミックレンジの問題なのか、レベルが低く聞こえて弱いんです。それにダニー・エルフマンの今回の音楽はファンタジー過ぎました。それに比べて、麦畑のクラーク・ケント(スーパーマン)とロイスのシーン、ハンス・ジマー作曲の「マン・オブ・スティール」の淡々としたピアノが凄く良かったし、このシーンでこの曲を使う選択をしたトム・ホーケンバーグは正しかったと思います。

おまけ

ジョン・ウィリアムズの「スーパーマン」のテーマは私も大好きなのですが、秀逸で有名過ぎて、「マン・オブ・スティール」の音楽、ハンス・ジマーは相当苦しんだと思います。で生まれた、ピアノと数人のドラムスとオーケストラの新しい「スーパーマン」のテーマ。今までとは全然違う、映画にはぴったりの素晴らしい曲です。流石です。もうヒーロー物はやらない・・・気持ちはわかりますよ、お疲れさまでした。

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