DD1000

機材のお話

AKAIという会社からでていたDD1000と言う機材。これは一般の人はまず知らないでしょうし、イメージもできないんじゃないかと思います。DD1000はデジタルMOレコーダーです。つまりメディアがMO(光磁気ディスク・Magneto Optical Disc)なんです。MOディスクはコンピューターの記録メディアとして、フロッピーディスクより大容量で同じように取り替えがきく便利なメディアでした。大きさも3.5インチや5.25インチがあり、DD1000に用いるのは5.25インチです。資料がなくてはっきりとした事は言えませんが、少なくとも30年前には発売されていました。当時としては画期的なデジタルサウンドエディターです。しかもメディアが交換可能。スタジオにDD1000があればメディアだけ持って移動すれば良いのです。

DD1000はデジタルMOレコーダーと書きましたが、ひょっとしたらデジタルMOエディターかも知れません。記録メディアというより編集装置だからです。音を録音して編集、再生までDD1000一台で完結し、出力時はタイムコードで映像とシンクロして仕込んだ音が完璧に再現されます。しかもプロ機材にしては割と安いのです。基本的に出力は2トラック(ステレオ)ですが、内部は4トラック(ステレオ✕2)で音を重ねることができます。これ凄いことだったんです。音の編集はもちろんですが、タイムコード上に音を並べて出力のタイミングを指定できるので細かい音付け(例えば足音を付けるとか)にも対応してました。細かい音付けで困るのが、音がかぶってしまうこと。前の音が終わる前に次の音が出る場合、1チャンネルだと前の音が切れてしまいます。でも2チャンネルあると前の音を残しつつ、次の音を出すことができます。DD1000はステレオ2チャンネルですから問題ない訳です。

今の無制限トラック当たり前の時代から見ると、ステレオ2チャンとか意味わかんね〜だと思いますが、当時は嬉しかったし、DD1000大好きでしたね。ただ良いところばかりではありません。当時としてはしょうがない事かも知れませんが、液晶画面が小さい!私はそれまでMacの画面で作業していたので余計に感じたのかも知れませんが、あの小さな白黒の(ん?白黒って言うのか?)でよく編集から貼り付けまでできたものです。とにかくどの作業も基本的に画面のスクロールを必要としますから全体を把握するのが難しいのです。後は本体に付いているボタンだけで編集するとストレスになる(笑)いやいや1台で何でもできるのは素晴らしいのですが、本体にものすごい量のボタンがあり、間隔も狭く、DD1000の配置状況によっては身体の体勢がヤバいことになります。(猫背になったり立ったままだったり)ですから私は専用のコントローラーを使ってましたが、スタジオでのDD1000はプレイバック用に置いてあるのがほとんどなので作業しづらいのです。あとメディアが5.25インチ650MBでしたから長い作品だと容量不足になりがちでした(後半1.3GBが出てきてだいぶ楽になりました)。

実はDD1000には兄貴が居て(あ、後から発売されたから弟か・・)DD1500と言います。私はこのDD1500には某スタジオ1箇所でしかお目にかからなかったのですが、こっちはマルチトラックなのです。しかも外部ディスプレイに出力できたため、作業も楽でした。でもDD1000ほど流行らなかった・・・この兄弟、今はもうお疲れ様ですが、懐かしい記憶として残っています。

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