サンプル曲

雑談

選曲業務の前段階でサンプル曲を出す場合がたまにあります。主にオープニング・メインタイトル部分の曲なのですが、重要な曲だから先に傾向やジャンルを決めておこうという意味合いがあります。作品にもよりますが、まぁ一般的に3タイプくらいが妥当ではないでしょうか。Aタイプ、Bタイプ、Cタイプという感じですね。スムーズにいく場合は「じゃあAタイプで行きましょう」などと答えが返ってきてスタジオでも作業がスムーズに運びます。事前にOKもらってるんだから悩まなくて良いですよね。ところがそうでない場合はむしろ面倒くさい結果になることもありました。

例えば「誰がジャッジを下すか問題」。企業PR映像などの場合、音楽を決定するのはディレクターかクライアントかどちらでしょうか?どちらの場合もありますが原則はクライアントです。制作費を出してるからです。ところがディレクターの中には芸術肌の強い人が居て、「自分の作品だから妥協しない!」という人が居ます。こんなときにサンプル曲を出すとディレクターはこだわって「全然良くないからもっと出してくれ」「だいぶ近づいてきたけど、他に無いか?」など、過去にはZタイプを超えて返りAタイプ(Newとか記述しますが)になったこともあります。で、時間かけてやっとOKをとってスタジオへ行くとクライアントから「この音楽は嫌だな」と言われてびっくり・・・は?みたいな気分です。つまりディレクターは自己完結しててクライアントに音楽の確認をしていないんですね。ディレクターは「私はこの音楽で行きたい、そのように編集もしてきた」などと一応は突っぱねますが、怖い顔の(笑)プロデューサーから耳打ちされると「俺は今の曲がいいけど、悪いけど変えてくれる?何でも良いよ」とこっちに丸振りです。さて困るのはこっちです。そんなつもりしてないからその場で選曲です・・・で、少ない手持ちの曲から初期にサンプル曲として出したAタイプの曲を聞かせると「それが良いですね」となる。おい!今までの時間はなんだったんだ!時間を返せ!状態です。ちなみに最初にサンプルとして出した曲がNGになり、すったもんだの挙げ句、結局最初の曲がOKになるのは”選曲あるある”です(笑)みんな経験してるんじゃないですか?

例えば「音質の問題」。サンプル曲はあくまでサンプル、音楽の傾向を確かめるものなので音質は気にしません(我々は)。ところがたまに「音がモコモコしてて良くない」とか「なんか耳にキンキンくる」か言ってくる人が居ます。今はデジタルの時代なので少ないですが(でもたまにノートパソコンのスピーカーで聞いて、よく解らない〜と言う人は居ますが)、昔カセットテープでサンプル曲出していたときは、クレーム出されることがありました。調べてみると先方のカセットデッキの回転速度が異常に遅かったり、ヘッドが汚れすぎててモコモコの音だったり(一般の人はカセットデッキのヘッドの汚れなんて気にしないですもんね)こっちに非が無いことの方がほとんどです。私が選曲を始めて1年目くらいだったでしょうか、深夜にプロデューサーから連絡があり「サンプル曲の音質が悪すぎるからすぐ来い!」と呼び出された事がありました。タクシーで向かった先は相手の会社ではなくプロデューサーの、いかにもバブリーなマンション。で、入ってみるとオーディオマニアなのか、めっちゃでっかいスピーカー。で、「この曲を聞いてみろ」と山下達郎(だったと思う)の曲をかけて「良い音だろ、それに比べてこのカセットはなんだ」とサンプル曲の入ったカセットを再生して「ハイハットの音がキツすぎるし、低音が薄い、どうなってるんだ。」と言ってくる・・・。「いやいや、そもそもサンプル曲とは・・・」から話し始め、やっと納得させたら「どうこのスピーカー、いい音でしょう」って結局自慢したかったんかい!まぁこのプロデューサーは論外ですが、再生環境の違いもトラブル原因ではあります。

基本的にサンプル曲提出は、音楽の傾向を探るうえで、言葉では言い表せない問題を解消する良い手段ではあります。新しい発想にも繋がりますしね。ぜひ意味を間違えないでほしいです。

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