オープンリール・その2

機材のお話

ちょっとマニアックな専門知識の世界になりますがちょっと勉強しましょう。

ロクミリ(オープンリールですよ)での選曲作業は、アナログならではの注意点がいろいろあります。まず、仕込みを行うのはもっぱら事務所です。作業するスタジオとはロクミリのデッキ(テープレコーダーの事)が違います。録音したデッキと再生するデッキが違えば音も当然変わるのです。テープスピードも微妙に違うし再生周波数も違いますが、これはしょうがないです。機材の個性ですから。ただ最も影響するのが「アジマス」と「音量レベル」です。アジマスとはテープと再生ヘッドの当たり方と捉えてください。このアジマスの狂いによってこもった音になったり薄い音になったり、ひどく音質が変わってしまいます。このアジマスはある程度調整することができますし、音量レベルは簡単に合わせることができます。

選曲作業の場合、テープの最初に1Khzの信号を入れます。ピーーーーってやつです、人それぞれだけど20秒くらいかな。次に10Khzの信号を入れます。キーーーーーってやつです、これも同じ長さくらい。この信号(オシレーター)はプロ用ならミキサーやデッキに付いています。これを録音しておいて、スタジオのデッキで再生するのです。

まず、1Khzの信号でレベルを合わせます。1Khzの信号を再生してデッキのボリュームを回し、VUメーターの針を0の位置にします。完了したらエンジニアさん(昔は普通にミキサーさんと呼んでたけど)に声をかけて出力します。その出力された信号でエンジニアさんはレベルをとります。

次はアジマスですがこれはちょっと凄い。10Khzの信号を再生しながら、再生ヘッドについてるネジをグリグリとイジります。そうするとVUメーターの針が左右に振れるのですが、一番右に行く位置にします。これでOKなのですが、アジマス調整はデッキに専用つまみの様なものは付いていません。むき出しにした再生ヘッドのネジを六角レンチなどで直接イジるので、間違えた方向に回し続けるとデッキを狂わせてしまいます。自分のデッキなら絶対やってほしくない行為です(笑)めちゃくちゃですよ。とはいえ、デッキの環境を同じにするために必要な行為ですからしょうがないのですが・・・たまに新人が「あれ?あれ?」とかいってグリグリ回してるの見ると怖くなります。

とにかくこれで音を再生できる環境が整いました。

再生方法にもいろいろあります。初期はほとんどが「叩き出し」です。普通に再生ボタンを押すのですが、アナログデッキですから音の立ち上がりは安定しません。グニョ〜と始まります。ですから1秒前にスタート、安定した1秒後の音が出るようにします。たとえばビデオであればタイムコード10秒に音を入れたいなら、1秒前の9秒に再生ボタンを押します。当然テープは1秒分戻しておきます。ではタイムコード10秒10フレームに音を入れたい場合はどうするか・・・1秒10フレーム戻しておいて、9秒に再生ボタンを押します。ちなみに私はどんなスタートタイムでも1秒前に置いてフレームで叩きます。自慢してます(笑)。

もう一つが「キュースタート」、いわゆる自動スタートです。音を入れたいタイムをエンジニア(もしくはアシスタント)に伝え、デッキの指定の位置に音頭を置いておけば、何もしなくても自動でスタートします。これは楽ですね。

再生が終わったら停止ボタンで再生を止める・・・これは誰でもできますが、次の曲(もしくは数曲先の曲)に送るとき、もしくはやり直しで戻すとき、これはちょっと難しい。再生ヘッドに手を当てて早送り(もしくは巻き戻し)してキュルキュル音を聞きながら場所を把握するのですが、目的場所に来ても停止ボタンを押してはいけません。早送りの場合は一旦巻き戻しボタンを押して動きが止まったら停止ボタンを押します。巻き戻しはその逆です。これは早送りや巻き戻しでテープが高速回転しているとき、急に止めるとテープに負担がかかり、状態の悪いデッキなら最悪テープが伸びて傷んでしまうからです。この早送り、巻き戻しのボタンをカチカチっと切り替えながら止めるのは、初めての人にはかなり難しいと思いますが、長くやってると逆にそれ以外で止められなくなります(笑)勝手に指が動きます。その姿も職人的ですよ。

以上が基本的なロクミリ操作です。あー書いてるとやりたくなる(笑)

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