オープンリール・その1

機材のお話

今はデジタルの時代。スマホで音楽を聞くのが当たり前ですよね。もちろんポスプロもデジタル、選曲の仕事もコンピューターで作業しています。もうアナログ機材もスタジオではオブジェ状態ですね。音楽のやりとりもUSBメモリーだったり、サイトにアップロード・ダウンロードしたり、正直昔からみたら想像できない世界です。

ではデジタル時代の前、アナログ時代はどんな感じだったのでしょう。

選曲した音楽は主にオープンリールで持ち歩きました。オープンリールは磁気テープです。テープメディアとしてはカセットテープが有名ですが、プロの作業はオープンリールです。オープンリールは磁気テープを直接手で引き出せるのでハサミやカッターで切り、スプライシングテープで貼り付ける事により音楽を編集することができます。たとえば3分の音楽を編集して2分にするといった具合です。

このオープンリール、我々は「ロクミリ」と呼んでいました。ロクミリは6mmの事です。

なぜ6mmなのかと言うと、磁気テープの幅が6mmだったからです(正確には1/4インチです)。6mm幅の磁気テープがリールに巻かれており、大きさも5号リール、7号リール、10号リールなどがあり、それぞれ録音時間が違います。テープ速度が19cm/sのとき5号リールは15分、7号リールは30分、10号リールは1時間です。(太巻きというもっと短いテープもありました。)再生スピードは9.5cm/s、19cm/s、38cm/sから選べますが、音楽録音は38cm/s、選曲作業は19cm/sが一般的でした。

カセットテープはA面、B面がありますよね。オープンリールもA面、B面が一応あるのかも知れません(リールに片面に1、もう片面に2と書いてあります)が、スタジオ作業では一方通行です。ひっくり返すことはありません。6mm幅全部をモノラルかステレオで使います。編集作業を文字で表すのは難しいのですが、音楽編集の場合、編集点を再生ヘッドにこすり当てて確認し、デルマ(白鉛筆みたいなやつ)でテープに印をつけ、もう一箇所の編集点も確認してデルマで印をつけます。その2箇所の編集点をテープを引っ張り出して重ね、斜めに切ります。切り取ったテープは捨てて、残ったテープをスプライシングテープで貼り付けます。つまり詰める訳ですね。

ロクミリを使った作業は奥が深く、エフェクターを用意しなくてもフィードバックディレイを作り出したり、テープの掛け方だけで逆回転させたり、ループを作ることもできます。面白いですよ。

ただ、一般的には7号リールを使うのですが、最高でも30分しか録音できないですし、予備の音楽を用意したりすると作業に何本(何十本?)も必要になり、持ち運びが重いのです。移動時に結構肩に食い込みます・・・。USBメモリーだと何百曲あってもポケットに入りますよね。そこに関してはデジタル最高です(笑)。ただ6mm作業は職人技なので、我々の存在意義が発揮できる場所だったんですよね。それが無くなったのは寂しい気がします。ま、しょうがない。

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