音楽の構成を把握する

選曲について

市販曲であろうとライブラリー楽曲であろうと、選曲家は偏った聴き方をします。仕事で音楽を扱うので、当然そうなりますよね・・もう職業病レベルです。しかし、その偏った聴き方は必要な事なので、具体的に書いてみましょう。多少の差はありますが、どんな楽曲も基本は同じです。

イントロダクション

イントロはとても重要です。第一印象が一番重要なのです。正直、選曲時に音楽を全部聞くことはありません。何百曲も全部聞いてたら仕込みの時間がいくらあっても足りません。ほとんどの曲はイントロで判断します。イントロで「お、いけるかも」と思った楽曲のみ次の段階へ進めるのです。

おとなしいイントロ

広がりあるロングトーンで始まるとか、さりげないミュートギターのカッティングで始まるとか、テンポさえ解らない場合もあります。ただドラマ的なシーンに使えるので、どこまで引っ張れるか、イントロの長さを把握しましょう。

インパクトあるイントロ

バーーーン!やジャジャーーーン!と始まるイントロですね。シーンを選びますが掴みや印象づけに必要です。メジャー系(明るい和音)かマイナー系(暗い和音)で使用用途が違いますから確認しておきましょう。

サビのフレーズから始まるイントロ

音楽的なアプローチ向けですね。最初から歌うので、しっかり聞かせられるシーンに使いましょう。音楽の印象が重要ですから、楽曲としての魅力があるかどうかを判断しましょう。

イントロが無い場合

つまりメロディーから始まる場合ですね。作品全体の音楽構成から考えると、2曲め以降に使用する楽曲です。目的あるイントロが必要なときは使えませんが良い曲ならもちろんキープです。

Aメロ(メロディースタート)

さてイントロが終わってメロディーが出てきます。楽曲の本質の部分ですね。Aメロという書き方は歌唱楽曲みたいですが、主旋律、主題と受け取ってください。

イントロからのつながり

まず意識するのがイントロからのつながり方。自然な流れなのか、唐突なのか、イントロとは別物に感じるか・・・。これは印象が変わってくるので要注意。全体に言えることですが、選曲家として重要なのは、この曲はこういう曲だからとか、元々こうだったからとか、都合の良い理由付けをしないことです。楽曲をどう解体したら印象が変わるかを探ることが仕事です。

メジャーかマイナーか

レーベルではありません、和音の話です。楽曲の印象が明るいか暗いかは、ここからポイントになってきます。勘違いしないでください、明るいのが良くて暗いのが駄目と言っている訳ではありません。メジャーコードが明るく、マイナーコードが暗く聞こえるのは人間心理なのです。例えばRock系だとマイナーコードの方がカッコいい曲はいっぱいあります。印象を演出するためには、メジャー、マイナーを把握することは重要なのです。

メロディーの印象

大雑把にいうと、わかりやすいメロディーかわかりにくいメロディーかです。音楽単体で聞く場合と違い、映像に付ける音楽はわかりやすい方が感情移入しやすいのです。ですから、メロディーが最初からギターソロ!みたいな楽曲は使い所が難しいのです。長く聞ける曲(尺のこと)かどうかはメロディーにもかかってきます。

メロディーが無い場合

わかりやすく言えばカラオケです。実はカラオケは下手なメロディー有り楽曲よりBGM向きなのです。たまに「なんじゃこのダッサイメロディー」とか「うわっパクリじゃん」といった評価の低い(笑)メロディーもありますが、そんな場合カラオケの方が数倍便利です。ただカラオケの場合に気にしないといけないのは和音の進行。ずっとワンコードで演奏しているような楽曲はすぐ飽きますから。

楽曲の展開

たとえば、Bメロはどうなっているか、サビはどんな具合かという展開は、長く楽曲を使う上で重要です。Aメロだけの曲は3分間でも飽きます(2分でも飽きるか・・・)。

転調の有無

転調する楽曲は長い使用に耐えます。転調で新鮮さが出るからです。ただ転調した場合は編集作業が難しくなります。編集技術に自信が無い人は、フェードアウトがOKな場合を除いて、避けたほうが無難です。転調しない場合は特に問題はありませんが、急にリズムやテンポが変わる場合は注意しましょう。あと長過ぎるブレークが入る場合は編集を要する場合もあるので、ちゃんと把握しましょう。

変化に乏しい

海外の楽曲に多い傾向ですが、これ展開してる?ずっとA’じゃない?みたいな構成もあります。つまり印象が変わった気がしない・・・という展開です。これは素直に印象で判断しましょう。印象が変わらないなら長くは使わない事です。

エンディング

さてさて重要なのが音楽の終わり方。選曲時にイントロ聞いて「使える!」と思った楽曲は、次に終わり方を確認すると言っても良いくらいです。

完奏している

ちゃんと終わってる場合ですね。基本的に問題ないのですが、完奏にも様々あります。

  • 転調せずに終わっている
  • 転調して終わっている
  • rit(リタルダンド)して終わっている
  • カットアウトのように終わっている

転調しないで終わってくれていれば編集で尺合わせも楽です。使いやすいと判断できます。

転調して終わってる場合は自然な形で終われるように和音展開も把握する必要があります。長さも必要ですからシーンにもよります。とはいえ、尻合わせという方法もありますから、まあ大丈夫。

rit(リタルダンド)はちょっと厄介。楽曲の印象が強くなるので、作品の終わりにしか使いづらいですし、そういう曲は最後のジャーーーーーーンが長い場合が多い。ジャーーーーーーンだけで6秒とか使われると、大団円以外はキツイかなぁ・・・。

カットアウトのような終わり方は逆に作品の終わりには使いづらいのです。終わった感が無いからです。なんか終わった感じがしないなぁ・・・と印象付けてしまいます。

フェードアウトしている

どんなに良い曲でもエンディングとしては使いにくいですね。ドラマのエンドテロップになら使えますし、実際映画ではよく使われていますが、重要なのはテロップ前の本編の終わりです。ここにフェードアウトの曲はまぁ使いません。エフェクト使って終わらせることができるかどうか、模索はしますが不自然さはどうしてもありますし、使わないほうが無難ですね。

どうでしょう。この判断を1曲1曲するのですから、普通に聞くことはできませんよね。ポスプロの選曲家ってポイント絞って聞くので、意外に曲を覚えていない場合が多いです(編集すると覚えてしまいますが)。だから「選曲家なんだからどんな曲でも知ってるんだろ?」「選曲家だからこの曲知らないなんてありえない」って思わないでくださいね。

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