選曲作業の今昔

選曲について

今と昔、選曲作業がどう変わったか、ビデオ映像作品の選曲で比べてみましょう。

30年前の選曲作業

30年前に一般的だった作業の例で解説します。

打ち合わせ

仕事の依頼を受けると、打ち合わせをします。先方がこちらの事務所に来ることもたまにありますが、ほとんど我々が出掛けていきます。出かける先は先方の事務所だったり、映像を編集している編集室だったりします。

事務所であればVHSやベータといった、家庭用ビデオにダビング済みの映像を見ながら打ち合わせをします。編集室なら編集終わりの映像を家庭用ビデオにコピーしつつ、見ながら打ち合わせをしたりします。

どちらにしても、その場で台本と、VHSかベータを受け取ります。この映像を持ち帰り、作業することになります。

仕込み作業

さて事務所に帰って仕込み作業です。まずは打ち合わせのとき受け取った台本を見ながらビデオを見ます。音楽のスタート位置を1コマ1コマ、サーチしてタイムコードを読みます(タイムコードはビデオに、作業ができるように録画されています)。例えば01:01:30:25から音楽スタートなら、1分30秒25フレーム音楽スタートです。このように、音楽の入る箇所すべての、音楽の入りタイム、終わりタイムをメモします。

音楽の終わりタイムから、入りタイムを引いて、音楽の長さを調べます。01:01:30:25スタート、01:03:55:00終わりなら、2分24秒5フレームの長さということです。

選曲作業は、作品に合いそうな音楽ロールをライブラリーから取り出し、テープデッキにかけて聞きます。合いそうな音楽が見つかったら、ビデオとテープデッキを同時に再生して、合わせてみます。駄目なら選び直し、OKならメモします。

以上を繰り返し、全部の音楽が選曲できたら、ライブラリーから新しい6mmテープにコピーしていきます。M-1から順番にです。最後の曲はエンディングということですね。

コピーが終わったら編集作業です。尺を合わせたり、不要な部分のカットしたり、足りないときは伸ばします(事前に同じ曲を2回コピーしておきます)。編集するごとにビデオに合わせてみます。

仕込み終わりの6mmテープと予備の音楽、台本、返却するビデオテープを用意してスタジオ入りに備えます。

スタジオ作業

スタジオでは1曲1曲、映像に付けていきます。

まず、スタートタイムを言ってキュースタートを設定してもらい、所定の位置に6mmテープに仕込んだ音楽の頭を置けば、自動的にスタートします。音楽は映像とシンクロして動いているマルチトラック・テープレコーダーに録音されます。ディレクターがOKなら次の曲、NGなら別の曲を出します。

その作業を繰り返し、マルチトラック・テープレコーダーに全曲仕込めば、ナレーションや効果音とのミックス作業です。ミックス作業中に直しが出たら直し作業を行い。OKなら作業終了です。

現在の選曲作業

現在の選曲作業はデジタルならではで、いろいろなスタイルがありますが、平均的な選曲作業の例で解説します。

打ち合わせ

仕事の依頼を受けると、打ち合わせをします。先方がこちらの事務所に来ることもたまにありますが、ほとんど我々が出掛けていきます。出かける先は先方の事務所だったり、映像を編集している編集室だったりします・・・以外に、オンラインでの打ち合わせもあります。

事務所でも編集室でも、編集終わりの映像を見ながら打ち合わせをしたりしますが、映像はファイルの形で受け取ります。オンラインの場合はファイルを送ってもらい、ワードやPDFで送られてくる台本と照らし合わせ、電話やメールで打ち合わせします。

仕込み作業

事務所か自宅で仕込み作業です。まずはProtoolsなどのソフトウェアに映像を取り込み、台本を見ながら映像ファイルを再生します。音楽のスタートとエンドの位置にマークを打ち、タイムコードを記録します(タイムコードは映像に入っている場合もありますが、無くてもソフトウェアに表示されます)。

選曲作業は、作品に合いそうな音楽をライブラリーファイルから選んで再生します。合いそうな音楽が見つかったら、ソフトウェアに取り込んで、スタート位置に貼り付けます。合わせてみて、駄目なら選び直し、OKならすぐに編集してしまいます。

すべての音楽の選曲が終わり、スタート位置への貼り付け、編集が終わったらセーブして、Protoolsならセッションファイルをコピー。WAVファイルなら書き出して、コピーします。

仕込み終わりファイルと予備の音楽、台本をコピーしたHDDかSSDを用意してスタジオ入りに備えます。

スタジオ作業

スタジオではセッションファイルを開くか、WAVファイルを貼り付けてナレーション録りになります。すべての曲がシンクロして出力されるので、ちゃんと仕込み作業をしておけば、特にスタジオでの仕込みの時間は要りません。

ミックス作業に入って、全体を聞きながら音楽の良し悪しをジャッジします。直しが出たら直し作業を行い。OKなら作業終了です。

今と昔の一番違うところ

アナログとデジタルの違いは大きいですが、作業することに変わりはありません。

打ち合わせして、仕込み作業をして、スタジオ作業までは一緒ですが、昔は必須だった、1曲1曲付けていくというスタジオでの仕込み作業が、現在はありません。スタジオでの音楽仕込み作業が必要無くなったのです。昔はスケジュールも、例えば

  • 10:00 音楽及び効果音仕込み作業
  • 12:00 昼食
  • 13:00 ナレーション
  • 15:00 ミックス作業
  • 17:00 終了

などと予定を組みましたが、今は開始時間=ナレーション録音時間で、音楽や効果音はそれまでに貼り付けるので、特にスケジュールには組まれません。(たまに音楽確認の時間をとってくれたりしますが・・・)

昔は仕込みが間に合わなければ(よくありました)、スタジオ作業で対応しましたが、今はそもそもスケジュールが組まれておらず、間に合わなければスケジュール外の作業になり、事務所や自宅での作業を続けて、完成次第webで送るスタイルをとったりします。

今と昔、相当変わってるはずなのに、なんかそんなに変わった気がしないなぁ・・・。

コメント