透明人間

勝手にレビュー

2020年公開・監督:リー・ワネル 主演:エリザベス・モス 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ

最も新しい透明人間

「透明人間」というタイトルの映画はいっぱいあります。古くは1933年の作品から今回の2020年の作品まで、日本制作の映画もあります。ゾンビ物みたいなものですね。

原作はハーバート・ジョージ・ウェルズ(一般的にH・G・ウェルズと記載される)が1897年に書いた小説ですが、中身は相当アレンジされています。今回はいかにして透明人間になったのでしょうか、それは是非、映画を御覧ください。

タイトルの持つ魔術

「透明人間」というタイトルで、どんな映画なのかわかりますよね。透明人間が出てくるのです。ですから映画を見ているとき、観客はどこかに透明人間が居ると思い、目をこらして映像を見つめます。ドアが勝手に開くんじゃないか・・・とか、足跡が残るんじゃないか・・・とか。

監督もそれがわかっているので、部屋を長いカットで見せたり、関係ない部分を見せたり、観客の気持ちを煽りまくります(笑)。後から思えば関係ないシーンもハラハラして見てしまうわけです。完全にタイトルの魔術ですよね。

いやいや面白い映画です。かなり良かったです。途中で主人公の妄想の可能性もあるな、とかいろんな事を想像させられて、操られながら見てしまいました。主演のエリザベス・モスが、気が狂った人に見えてくるほど素晴らしい演技です。どんな内容かはあえて書きません。2020年版「透明人間」を楽しんでください。

なかなか良質のサスペンス映画ですよ。

サウンドトラック

音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ

私がこの作曲家を意識したのは「ブレードランナー 2049」の音楽です。ハンス・ジマーと2人で音楽を担当したのですが、シンセサイザーの使い方が上手くて、前作「ブレードランナー」の音楽・ヴァンゲリスの世界を新しく表現していましたが、今回もシンセサイザーの使い方が上手く、非常に怖いスコアになっています。オーケストラの音も入るのですが、サンプリングではないかと思っています(違うかもしれません)。

冒頭音楽なのか効果音なのかよく解らない音からスタートし、主人公が逃げるシーンではストリングスの速いフレーズが入りますが、なかなか聞かない作り方で、スリリングかつ個性的で非常に良かったです。

昔には無かった現代的映画音楽で、空間の表現や場面の空気作りが素晴らしく、派手ではない恐怖を印象づけています。メロディーでなくスタイルで聞かせる、ハンス・ジマー的アプローチですが、ハンス・ジマーとは全く別の表現で、そこにベンジャミン・ウォルフィッシュの個性を感じます。

ベンジャミン・ウォルフィッシュは他にも「IT/イット “それ”が見えたら、終わり」や「シャザム! 」「ヘルボーイ」などの音楽も担当していて、このジャンルが得意なのか、見事にハマった曲を書いています。

総括

この作品も新型コロナウィルスの影響を受けた、不幸な作品ですが、まるでヒッチコックの映画のような映像表現、人物の描き方が秀逸で、かなりお勧めできるサスペンス映画です。

透明人間という、何度も扱われた題材を、しっかりと練り直し、現代風にアレンジして仕上げた監督の(脚本も同じ)リー・ワネルの手腕はさすがです。役者として「ソウ」に出ていたので、恐怖ものの撮り方もよく知っているのでしょう。

今後の作品も期待できそうですね。

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