簡単な選曲、難しい選曲

選曲について

仕事ではいろいろな依頼が来ます。もちろん日々、粛々とこなしていくのですが、簡単な選曲、難しい選曲があります。感じ方は人それぞれですが、私の考える、一般的な感想を書いてみます。

簡単な選曲

正直、簡単な選曲なんて書くと、手を抜いているように思われそうで困るのですが、そうではありません。理由もあるのです。

初めてのプロダクションからの仕事の選曲

これ、意外だと思われそうですが、簡単な場合があるのです。

もちろん初めてのプロダクションなので、感覚もセンスも拘りもわかりません。わからない事ばかりですから難しいのも事実です。でも、わからないから自分の感覚で仕事ができます。相手も私の仕事のセンスがわからないですからね。

そして、一番大きな理由は、私の音楽を一度も使ってないということ。

何度も仕事しているプロダクションやディレクター、クライアントだと、だんだん音楽が無くなってきて、被ってしまいます。「この曲、前にも聞いたね」なんて言われてしまい「変えようか」と言われたりしますが、他に良い曲が無いから被る訳です。これはもう選曲ではなく探曲です。ライブラリーを隅々まで聞いて探すしかありません。

ところが初めてのプロダクションやディレクター、クライアントだと自分イチオシの音楽が堂々と使えるわけです。仮に先方が知っている曲だったとしても、それは不可抗力。私は初めて使うので自由に選曲できます。

思い通りに選曲できる環境での仕事は、ある意味”簡単な選曲”です。

キャスターが話す作品の選曲

良く作品な中に、キャスターが顔出しで出てきてトークしたりする番組やビデオがありますが、こういった作品も比較的簡単です。

なぜなら、キャスターの話すテンポや雰囲気が入っているので、音楽を合わせたときに答えがすぐわかるからです。気持ちよく音楽が乗れば、プロデューサーやディレクターも気持ちが良いのです。

ただしキャスターがプロであることが重要です。たまにキャスター素人の方(会社の社員とか、学生とか)がキャスターを務めるビデオもありますが、これは逆に難しい・・・どんな曲を合わせてもしっくりこない・・・台本を棒読みした作品に音楽は合いません。ギャグ以外は。

商品紹介ビデオの選曲

カタログ的な商品紹介番組やビデオは、比較的簡単な選曲です。

商品紹介もドラマ仕立てだったりドキュメンタリー的だったりすると演出が絡みますが、カタログ的商品紹介は、深く考える演出はむしろいりません。淡々と明るく、テンポよく見せていくのがポイントです。テンポは何を紹介するかにもよりますが・・・。

教材ビデオの選曲

これは、仕事としては簡単ではないのですが、選曲は簡単です。

教育ビデオは目的がはっきりしていて、基本は視聴者が勉強するためのものです。ですから音楽は目立ってはいけません。どちらかというと心理学的な音響演出になります。♫ポーンというタッチ音を入れたり、シーン変わりを判らせるための音楽だったり、飽きないように、ところどころシンプルなBGMを入れたりします。選曲で悩むより、タイミングを考える仕事ですね。

難しい選曲

ドキュメンタリーの選曲

ドキュメンタリーというジャンルは基本的に事実を追求するので、必要以上に作り込むことが許されません。悲しいシーンだからといって壮大なバラードで盛り上げたら”ヤラセ”みたいになりますしね。

一番難しいのは、音楽を付けるか付けないかの判断、付けるなら、何を表現したいか明確にする音楽を選ぶ。しかも見る人によって意見が違う。主観的に考えたり、客観的に考えたり、そしてそこに合う音楽を選ばないといけない・・・。

とにかくドキュメンタリーは、しっかり内容を理解して、ディレクターが何を表現したいのかを把握することです。まず迷いを無くすことが重要です。迷ってると1曲も選べなくなります。

ドキュメンタリーもバラエティー寄りだとか、明るい系なら取り組みやすいのですが、ハードなものは気合を入れて仕事します。

芸術肌なクリエーターあいての選曲

なんじゃそれ?と思われそうですが、たまにあります。ディレクターが芸術肌”クライアントが”芸術肌”な場合です。例えば

ディレクター「このシーンにピアノの曲を付けてくれ」

私「どんな感じですか?」

ディレクター「わからん、だが必要だ」

で、良さそうなピアノの曲をつけてみたら

ディレクター「違うな」

私「どんな感じですか?」

ディレクター「わからん」

なんか、こぼれ話みたいですが、たまにあります。というか、拘りが解らないので難しいのです。凄いことを考えているのか、確固たるイメージがあるのか解らないんですね。仕込みでも相当迷いますが、スタジオに行くのが嫌になる時もあります(笑)。

センスを問われる選曲

わかりにくかも知れませんが、あるんですよ。センスを問われていると感じる選曲が・・・。

選曲して提出するとき「このレベルね」って感じられる恐怖というか、冷めた口調で「他にないの?」と言われる仕事。例えばめっちゃお金かけたCMとか(我々にお金はまわってきません)新しさを追求する作品とかですね。

当然「是非やらせてください」状態で挑むんですが、プレッシャーも凄くて、選曲しても、本当にこれで良いのか判らなくてブレまくります。

いや〜難しい。

こうやって書いていくと、簡単な選曲は自分が理解しやすかったり主張しやすい選曲。難しい選曲は理解ができなかったり、自信がない選曲ということですね。めっちゃ長い作品や、音楽をいっぱい使う作品は難しいというより、手間が大変な選曲なんですね。

なるほど、自分で納得(笑)。

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