2016年公開・監督:デミアン・チャゼル 主演:ライアン・ゴズリング エマ・ストーン 音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
ミュージカル映画
個人的な事で申し訳ないのですが、私は恋愛映画とミュージカル映画が苦手です。恋愛映画は見ててこっ恥ずかしいのが苦痛で、ミュージカルはセリフを歌にすることで冷めちゃうからです。
この「ラ・ラ・ランド」はミュージカル映画です。ですから公開当時は避けていました。とはいえ2017年度アカデミー賞では、作品賞こそ取れなかったものの、監督賞、主演女優賞、撮影賞、作曲賞 、歌曲賞、美術賞と6つの賞を受賞した作品です。しかも作曲賞・・・見ないわけにいきません。
で、見てみた感想は・・・「素晴らしい!」でした。
なんかミュージカルなのに純粋なドラマを見た気分です。ほろ苦さが良いんです。感動した〜じゃなく、気持ちがジーンとくるほろ苦さなんです。ミュージカルでこんな表現できるんだと新発見でした。
主演は男女、どちらも素晴らしいのですが、やはりエマ・ストーンはより良かった。目が大きくてアニメチックなお顔をされているんですが、この映画をみてファンになりそうです。
ミュージカルシーンはワンカット?
始まりのシネマスコープのロゴから、この映画に対する監督の拘りを感じます。高速道路で渋滞中の車のシーン。車内からいろいろなBGMが聞こえてきたと思ったら、急にミュージカルシーンのスタートです。しかも長尺をワンカット?結構壮大なシーンですが、素晴らしい出来栄えです。ミュージカルだぜ!覚悟しろ!と言われた気分です。このシーンに限らず、ミュージカルシーンはほとんどカットを割らない映像です。
私の知っているミュージカル作品は、「サウンド・オブ・ミュージック」とか古い作品なのですが、この「ラ・ラ・ランド」には新しさしか感じませんでした。私の知っているミュージカルとは何かが違うのです。感じたのはドラマ部分とミュージカル部分の差が意外に無いこと、ミュージカルの歌を歌い上げ過ぎないことです。今までのミュージカル映画って舞台を映画にした印象で、段取り感が気になったのですが、この「ラ・ラ・ランド」は映画を見ている気がするんです(映画だよ!)。
唯一、個人的にうーんとなったのは、プラネタリュームでの空中イメージシーンです。あーこのシーン、もっと違う表現なかったのかなぁ・・・と思いました。ひょっとして何かのパロディーなのかも知れませんが、ミュージカル作品をよく知らないので・・・。
最後のジャズ・バーでの”もしも”のイメージはグッときました。なにか人生って・・・と思わせる素晴らしい演出で、現実とのギャップがほろ苦い・・・。
とにかく、ミュージカルなのに自然な感じを損なわない、見やすいし、気持ちが乗る作品でした。
サウンドトラック
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
監督のデミアン・チャゼルの大学時代の同級生らしいですね。監督の前作「セッション」の音楽も担当していたようです。
この「ラ・ラ・ランド」で見事2017年度アカデミー作曲賞を受賞しました。
新しすぎない音楽
この映画を見る前は、ミュージカルとはいえ最近の作品だし、ビート中心の音楽になるんだろうと思ってましたが、見事に違いました。それどころか、ちょっと古めな印象さえある楽曲ですが、曲は良いですよ。映画音楽としても良いし、ミュージカルとしても良いです。
ただ、1曲目のミュージカルシーンを聞いて感じたのは、あれ?キー低くない?でした。つまり大勢が歌っているのですが、もっとキーを上げたほうがハリが出て良くない?歌えるでしょ?と感じたんです。途中で転調してキーは上がりますけどね。この印象は他の曲にも感じてて、なんと言うか、わざと緩く感じるキーにしたのかなぁと思ったほどです。
最近の女性の声は、昔の人に比べてキーが低くなる傾向があります。男性はセリフから歌に、わりと自然に切り替わりますが、女性はセリフから歌になるとキーが上がります。つまり地声は意外に低い女性が多いんです。実際にエマ・ストーンのオーディションの時の歌は、それまでのセリフと歌のキーが全然違います。
あと、男性と女声のデュエットは、1オクターブ差でユニゾンする場合、昔ほど楽ではなく、女性のキーが低くなった現在では男性は低い部分で歌うことになります。もちろんプロですから高くも低くも歌えるでしょう(ファルセットという方法もありますし)。だけどセリフとのギャップを埋めるにはできるだけ自然なキーで歌う事になります。
この部分が逆に新しさを感じた部分で、昔ならセリフのキーに関係なくミュージカルシーンは歌に全力で歌い上げていたと思いますが、「ラ・ラ・ランド」では、歌は全力歌い上げではありません。自然さを残しているので、私も受け入れやすかったのでしょう。
あくまで私の考察ですから、違っているかもしれませんが・・・。
総括
見てて思ったのが、「アナと雪の女王」みたいだな・・・でした。話の内容は全然違いますが、ミュージカルの作りと言いますか、表現と言いますか・・・ディズニーアニメの最近のミュージカルを実写化したら「ラ・ラ・ランド」みたいになるんじゃないかな、と思いました。
あとはタップダンスのシーン。タップのカチカチいう音より、地面と擦れる音の方が大きく、なんでこのシーン、リアルな音付けしてるんだろうと思いました。このあたりも面白い部分ですね。
ミュージカル苦手な人でも楽しめる映画です。とても勉強になりますから、是非見てみてください。
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