音を扱うスタジオにスピーカーは必須(言うまでもありませんね)。スピーカーにはもの凄く種類がありますし、スタジオによっても違うので全部を取り上げるのは無理です。なので印象に残ったスピーカーを書いてみましょう。
MAルームのスピーカー
スタジオと言っても、音楽レコーディングスタジオ、収録スタジオ、編集スタジオなど、スピーカーを使うスタジオはいろいろありますが、選曲作業をするMAスタジオでのスピーカーに絞ります。
スモールとラージ
MAルームには、だいたい2種類のスピーカーがあります。スモール・スピーカーとラージ・スピーカーです。
スモール・スピーカーは、エンドユーザー(視聴者)が、ご家庭のテレビのスピーカーで聞く音を想定した、小さめな音でモニターする小さなスピーカーです。
ラージ・スピーカーは細かい音を確認したり、ノイズやミスを聞き逃さないように大きな音で再生する、大きなスピーカーです。
この2種類のスピーカーを使い分けて、音を確認したり、ミックスしていくわけです。
スモール・スピーカー
AURATONE 5C Super Sound Cube
スモール・スピーカーの伝説的スタジオ定番スピーカー「オーラトーン」。長くポストプロダクションで音の仕事をしている人で、このスピーカーを知らない人は居ないでしょう。30年前にこのスピーカーが置いてないスタジオを見たことがないレベルです。
スピーカーはフルレンジ、つまり一つのスピーカーですべての周波数を再生するタイプです。1辺15cmくらいの正方形なキューブ型のデザインで、黒色とウッドがあったように記憶しています。このスピーカーがエンジニアの前の調整卓(ミキサー)の前にあり、切り替えながら作業してました。
スタジオ定番のスピーカーがあるということは、我々選曲には非常に助かるのです。スタジオ常駐のエンジニアは、いつも自分のスタジオですから、自分のスタジオの音には慣れているのですが、いろんなスタジオを渡り歩く我々は、毎回違うスピーカーで音を聞くことになります。ですからスタジオごとに音楽の聞こえ方も違い、「低音がキツすぎるかな」とか「ハイが出すぎている」と不安になるのですが、どこのスタジオにもある定番スピーカーがあると基準を確認できるのです。
当時は「スモール・スピーカーで聞かせて」ではなく「オーラトーンで聞かせて」と言えるほど定番だったので、実にお世話になったスピーカーでした。
YAMAHA NS-10M
スモール・スピーカーのもう一つの定番、ヤマハ「テンエム」。なぜ「テンエム」なのかはお解りですね、10Mという型番だからです。「テンモニ」とも呼ばれてました。
そもそもYAMAHA NS-10で”M”が無かったのですが、いつの間にか”M”になってました(笑)そのあたりはあまり詳しくありません。
YAMAHA NS-10Mは2ウェイスピーカーで、ツィーターとウーファーの2つのスピーカーで構成されており、ハイの音の輪郭がはっきりしていました。大きさもスモール・スピーカーとしては大きくて、家庭用テレビスピーカーとは比べ物にならない”いい音”なので、スモール・スピーカーとしての目的にはイマイチですが、このスピーカーも定番という意味では基準になる音を知ることができました。
実はこのスピーカー、私はあまり良い意見を聞いたことがありませんでした。スタジオのミキサーに聞いても、あまり良いとは思わないみたいな意見が多かったです。だけど生産中止が決まると買い占めに走ったり、今では価値もあがってるから、実は良いスピーカーだったんですね。
ラージ・スピーカー
ラージ・スピーカーはスタジオ定番というほど同じスピーカーが入っていることは無いようです。なので独断で(笑)
GENELEC
今となっては定番に近いくらいスタジオ導入率の高いパワード・スピーカー。パワード・スピーカーとはアンプとスピーカーが一体になったスピーカーで、メーカーとしてはスピーカーの音を作り込めるメリットがあります。
GENELEC・スピーカーの音を初めて聞いたときにはびっくりしました。なんていい音なんだ!と。なんだろう、今までいろんなスピーカーの音を聞いてきましたが、聞いた瞬間「GENELECの音だ!」とわかるくらい個性的で美しい音でした。デザインも、四角いのが当たり前だったものが、丸みを帯びた新しさが伝わってくるデザインで、置き場所を選ぶな(笑)と思いました。
出始めの頃と違い、今は種類も形も様々で、壁に埋め込みもできるようになったみたいです。
私も買いました〜(笑)。
PIONEER EXCLUSIVE model2402
このスピーカーは音もさることながら、高級感あるスピーカーで、いかにも高そうなスピーカーでした。変な話ですが、このスピーカーが入っているスタジオは規模も大きなところが多く、「きっと凄いスタジオなんだ」と思わせる印象を与えます。クライアントが立ち会う仕事にはもってこいのインパクトです。
ちなみに更に威厳がある、EXCLUSIVE model2402twinというウーファーが2つの物もありました。
気になるお値段はmodel2402が90万円くらい、model2402twinが130万円くらいです。
言っていきますが、1本です。普通はステレオで使いますから2本ですよね。倍のお値段になりますよ。
REY AUDIO RM-5B
なかなかMAルームではお目にかからないスピーカーにREY AUDIOのスピーカーがあります。これまた威厳を感じるWoodyで重厚感あるスピーカーです。雰囲気はEXCLUSIVE model2402に似てます。
RM-5Bと書いたのは、私の知ってるスタジオに導入されているのがRM-5Bなので書いたのですが、種類は多いです。REY AUDIOもツインウーファーのRM-4Bがあり、さらなる高級感です。
このREY AUDIOもそうですが、Made in Japanです。REY AUDIOは木下さんがお作りになったとか。YAMAHAもPIONEERもREY AUDIOも、日本製のスピーカーってホント優秀なんですね。
番外編・BOSE
BOSEのスピーカーって世界的に有名だし、カー・オーディオやパソコンのスピーカーとしても使っている人多いですよね(カラオケのスピーカーとしても使われますね)。
ところがBOSEのスピーカーが入ってるMAルームを知りません。なぜなのでしょう。
私が昔聞いた話では「ボーズは音を作りすぎる」という事でした。つまりスタジオで使うスピーカーに大切なことは、できるだけ原音に忠実な音を出すということ。BOSEは、綺麗に音を聞かせるために、原音に忠実な音というより、聞いた印象が良い音作りのスピーカーだから、という理由でした。できた音を聞くのには良いが、音を作るためのスピーカーではないという判断ですね。
私の車のスピーカーはBOSEです。スピーカーも用途によって使い分ける・・・プロですねぇ(笑)。
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