2014年公開・監督:ウェス・アンダーソン 主演:レイフ・ファインズ 音楽:アレクサンドル・デスプラ
ドラマディ
コメディー・ドラマの事をドラマディと言うらしく(dramedy)この映画はまさにドラマディです。
「グランド・ブダペスト・ホテル」は2015年度アカデミー賞に作品賞も監督賞もノミネートされたのですが「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に両方負けました。とはいえ他の4部門を受賞しました。
コメディーとはいえドタバタではなく、ややミステリーな作りとなっており、ホテルのコンシェルジュのお話ですが、遺産相続に巻き込まれ、逮捕されたり、脱獄したり、殺し屋が現れたりと次から次へ話が展開していきます。上映時間も99分ほどで丁度良い長さで見やすいです。
日本なら三谷幸喜作品に近いですが、ヨーロピアンテイストの独特なセリフと世界観で、クラシックな印象を受けると思います。本当に2014年の映画?と思えるほどですが、スキーとソリの追跡シーンやホテルに向かうケーブルカーなどのシーンはゲーム画面のようで、最近の映画だなと感じます。
なんの先入観も無く鑑賞したのですが、「アマデウス」のサリエリ役のF・マーリー・エイブラハム、「戦場のピアニスト」「キングコング」「プレデターズ」のエイドリアン・ブロディ、「プラトーン」「スパイダーマン」のウィレム・デフォー、「ジュラシック・パーク」「インデペンデンス・デイ」のジェフ・ゴールドブラム、「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」の女性殺し屋のレア・セドゥまで、見たことのある役者が多く出演していて、それも楽しさの要因でした。
とはいえ指がちぎれたり、首が切断されたり、卑猥な絵が飾られたり、大人向けスパイスがピリっと効いていますのでご注意を。
サウンドトラック
音楽:アレクサンドル・デスプラ
「グランド・ブダペスト・ホテル」はアカデミー作曲賞を受賞しています。音楽担当はアレクサンドル・デスプラ、「英国王のスピーチ」「ハリー・ポッターと死の秘宝」「ゼロ・ダーク・サーティ」「GODZILLA ゴジラ」(2014)など多くの作品を手掛け。この「グランド・ブダペスト・ホテル」の他に「シェイプ・オブ・ウォーター」でもアカデミー作曲賞を受賞しています。
劇伴は基本的に軽快なバロック風スタイルです。あまり目立たないサラっとした印象ですが、ところどころカットやシーンにバッチリ合わせています。
例えば普通に劇伴として流れているのに、主人公が部屋で1人で食事をとるシーンで急にスピーカーから流れる店内BGM的処理がされていました。シリアスな映画ならタブーだけど、コメディーですから面白いアイディアだと感じました。
追ってから逃げるシーンではケーブルカーが途中で止まり、キュ、キュときしむのですが、音楽のリズムとシンクロしてて面白い効果を出してるし、その劇伴のメロディーを賛美歌として歌ったり、細かい部分で非常に凝った作りとなっています。
一番目立つのがエンドテロップ。今まで劇伴として後ろに居た音楽がここぞとばかりに主役になり、軽快でスケールの大きな演奏で盛り上げます。エンドテロップにアニメが加わり、音楽に合わせて踊るというおまけ付き。
ここまで主張すればアカデミー作曲賞に向けて大アピールですね(笑)だから受賞したのかな?
総括
アレクサンドル・デスプラという作曲家はいろいろなアプローチができる人なんですね。
同じアカデミー作曲賞受賞でも「グランド・ブダペスト・ホテル」と「シェイプ・オブ・ウォーター」は全く違うアプローチだし、見事にこなしています。才能もあるのでしょうが、職人技という気がします。たとえば「GODZILLA ゴジラ」はフルオーケストラのしっかりしたスコアだったし、同じ作曲家とは思えぬ多彩な音楽を作っています。
作品数も多いし、安定した実力がある作曲家であることは間違いないですね。
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