2016年公開・監督:マット・シュレーダー 音楽:ライアン・トーバート
映画を知る上でも絶対見るべきドキュメンタリー
この作品は映画音楽を主役にしたドキュメンタリー映画です。
この作品には大勢の著名な映画音楽の作曲家が登場します。誰もが知ってるあの音楽は、この人が作ったのか・・と、いろんな発見ができる思いますし、映画音楽を作るうえで作曲家が何を考え、どう取り組んだのかなどがわかります。登場する作曲家を何人かピックアップしましょう。
ハンス・ジマー
日本では「料理の鉄人」でおなじみになった映画音楽「バックドラフト」や、「ライオン・キング」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ダークナイト」など、何十本もの映画の音楽を担当した作曲家です。もともとバンドでキーボードを演奏してたので、いわゆるコテコテのクラシック畑の人ではないせいか、リズミカルかつパーカッシブで攻撃的なオーケストラを得意とする作曲家です。
この映画で、ハンス・ジマーは「”面白い作品がある”と誘われると、選ばれたことに有頂天になるが、皆が帰ると1人で青ざめるんだ。どうやればいいか分からない、電話で断りたくなる」と言っています。
もの凄く共感できますよね。作曲家と選曲家は違うけれども、仕事を受けて、1人で作品を仕上げなきゃならないのは同じ、音楽を扱うのも同じ、大きなプロジェクトになればなるほど、絶対やりたいのに、半端ないプレッシャーに耐えなきゃいけない。こんなに有名で何でもできる「力」があるハンス・ジマーでさえ、我々庶民と変わらない思いをしてるんですね。このドキュメンタリーで一番嬉しかったのは、何度も出てくるハンス・ジマーのネガティブな言葉です。夢ばかりではない、リアルな現実がちゃんと表現されていました。
ジョン・ウィリアムズ
言わずと知れた「ジョーズ」「スターウォーズ」「ET」「インディージョーンズ」「ジュラシック・パーク」「ハリーポッター」などの作曲家。
「すばらしき映画音楽たち」では、いかにジョン・ウィリアムズが凄い人か、どんなに凄い映画音楽を作ってみせたか、そして今の作曲家たちに影響を与えたかを、さまざまなインタビューであきらかにしています。「ET」の音楽の表現を細かく分析して、何を表現しているのか、映画を見る人にどんな効果をあたえるかに迫っています。
スティーブン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズの、昔のフィルムでの音楽打ち合わせの様子や(カメラが回っているから、本気ではないだろうけど)ジョン・ウィリアムズを称えるインタビューなどを聞くと、ネガティブなハンス・ジマーと違ってポジティブな世界に触れられて、こんな世界で仕事がしたいなぁと思わせられます。
ジョン・デブニー
「スパイキッズ」「チキン・リトル」「アイアンマン2」の作曲家です。
彼は「演奏者とのセッションが生きがいだ」と、レコーディングのときに、自ら指揮をすることに拘ります。最近は作曲家自ら指揮をすることが減り、監督や他のスタッフと同じ場所で、一緒に音楽聞きながらジャッジしていきますが(まぁむしろ自然な感じがしますが)、演奏家側に居ることで、より音楽を感じる立場でいたいのでしょう。音楽を作るという意味では、自分で指揮する方が、より演奏家に伝わりますし、レベルも上がるでしょう。が、監督と一緒に聞くことで、監督が求める表現を より知ることができるので、どっちを取るかでしょうね。
などなど、いろんな作曲家がいろんなアプローチをするのも面白いですし、ひたすら表現を求めて楽器を揃えるなど「それ必要?」と思えることをする作曲家も面白い。
映画音楽の歴史も学べるし、是非見て欲しいドキュメンタリー映画です。
サウンドトラック
ライアン・トーバート
この映画の音楽担当はライアン・トーバート。ドキュメンタリーでしかも作曲家が出てきて、その作品の音楽がバンバン流れるのに、音楽担当って?ひょっとして選曲家?と思ったのですが、作曲家でした。
どんな方かはよく知りません(ごめんなさい)が、いろいろ調べていて、なんと「すばらしき映画音楽たち」のサントラ盤も出ていることがわかりました。つまり「すばらしき映画音楽たち」という映画音楽ドキュメンタリー作品の映画音楽を作ったんですね。
Amazon Musicで「Score: A Film Music Documentary (Original Soundtrack)」というタイトルで出ていますので、興味ある方はどうぞ。
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